加藤幸子

純文学文芸誌を買う習慣は続いていて、思いつくままにぺらぺらめくって、読めそうなところ、気が向いたところを読んでいる。本日は、群像にあった、「トラウマ犬」という随筆を読んだ。うまい。文章がいい。なんて安定している安心して読める文章なんだろう。と思い、経歴を確認する。ずいぶん年上だ。(というか年上とかいうレベルじゃなく、私の父母と同年代だった)

このエッセイ、捨て犬をもらうという話だが、犬と著者のやりとりが何ともいえず、いい。犬に向けるまなざしが温かい。それでいて、なにかのトラウマのために、家からでることのできない犬にたいし、地道に行動療法をしかけて徐々に成功させていく、行動を伴った知性がある。この人すごいな。そう思って、群像の巻末を見る。

なるほど、作家であることがわかった。では、どんな小説を書いているのか調べてみる。インターネットはすばらしい、すぐにでてくる。とりあえず、書店で手に入りやすい角川文庫の2冊を手に取ってみた。すると「池辺の棲家」の解説が春日武彦で、しかもこの本を「今年出版された本のベスト3」に選んだ、と書いてある。当たりだ。買いだ。

で、いま、その最初の一編を読んだ。すばらしい。そうそう、こういう小説が読みたかったんだよ。日本のアリス・マンローだよ。

ほんと文芸誌読んでいると、いい作家に出会える。そう思える一日だった。

池辺の棲家 (角川文庫)

池辺の棲家 (角川文庫)