電子出版iPad,iPhone,kindle

日本でもamazonのkindoleや、appleiPadが発表されて、いよいよ電子出版本格化か?と話題になっている。そこに私も参戦してみよう。

まず、いろいろな意見をネットで読んでいると、かなり違和感がある。その一つは、これから電子出版が始まるみたいな言い方をしていることだ。

私の認識では、電子出版というものはすでに始まっているし、普及も日本ではかなりしていると思っている。

その事実として、電車のなかでの携帯の使用と、雑誌や新聞の売り上げ低下があげられる。暇つぶしや流行などの情報を得るという意味での、雑誌や新聞はすでに電子化されているといえる。もちろん今までの雑誌や新聞がそのまま電子化されたのではなく、同じ要求を満たすことがネットでできるようになったということだ。

こう考えると、以下のような電子化はすでにかなり普及している、と私は思う。

流行、ニュース→ヤフーなどのポータル、新聞サイト
テレビ欄→ネットやTV自体で見ることができる
書評、エッセイやコラム→ブログ
趣味的な情報、料理などの実用情報→ブログ、ウィキ(まとめサイト)、youtube
辞書、辞典→ポータルやウィキペディア
時刻表→路線案内

住宅情報、就職情報、アルバイト情報など→それ用の専用サイト

また、口コミがいわゆる口コミの範囲を超えて広がる(メール、SNS、ブログ、twitter)ので、広告の機能全体が電子化され、また非企業化されてきている。

youtubeなどの動画サイトは、とうぜんTVの役割を持つ以上に、口コミの効果も持っているし、実用的な情報(料理の作り方や楽器の演奏法など)も書籍以上の価値をもつに至っている。

つまり、雑誌、新聞、書籍の一部は、すでに出版の電子化はここまで進んでいる、と考えた方がいい、と私は思う。
しかし、また逆の効果もある。たとえば、ラノベが受け入れられているのには、ドラクエなどのゲーム文化と、メールやブログなどの活字文化にどっぷり使った世代だからこそ、親しめるものだということだ。活字の苦手な旧世代には、ラノベがマンガ代わりになるという気持ちがわからないし、活字大好きな旧世代には逆にあのクダケた口調が許せない。

話はちょっとそれるが、「若者の活字離れ」などというものは過去の産物で、いまの若者のは「活字ばかり読んでいていて、人と音声で会話が苦手/できない」のだと考えるのが適切だと私は思っている。もちろん、活字ばかり読んでいるといっても、読んでいるのはメールが主なので、夏目漱石やらを知っているわけではない(もちろん一部には読んでいる人間もいるが)。

私は、マンガ=易しい、活字=難しい、という図式も崩れてきていると思っている。マンガは書き込みや内容が高度化して、すっと読めないものが増えていると思うし、逆に、文章だけのほうがすっと頭にはいっていくということもあるからだ。マンガが苦手というのも、年寄りだけの特徴ではなくなって来ているのではないか、と思う。

電子化に話を戻すと、これだけ電子化が進んでいるのに、インターネットにまともにつなげない、kindleよりも、iPadiPhoneのほうがよほど電子出版に理解があるような気がする。ただし、ポメラが受けたように、kindleもそのシンプルさをよい方向にのばす可能性もあるとは思う。

では、紙の本はなくなるか、というとまずはなくならないだろう。紙にはいくつもの利点があるからだ。その利点をあげていくのは難しいし大変なので、書かないが、一つだけ、そう思う理由を挙げておく。

それは、ブログを書籍化した本が売れる、という事実だ。
週間誌に連載されたものを全部読んでも、なぜか単行本になったら買ってしまうという人は多いはずだ。ネットで全部読めるけど、紙の本も買ってしまう人がたくさんいる。その理由は人によりさまざまだけれども、紙で読むという行為は、決して電子機器では置き換えられない。図書館で借りて読むのと、買って読むのでは、違うという人がいるのと同様に。

もちろん、これからさらに書籍をはじめとした出版業界は電子化の影響をうけていくだろう。書店にはおそらくCD屋のような未来が待っていると思うし、すでに小さな書店はどんどんと減っている。しかし、パイが減るにしても、紙の本は残る。それも細々と残るのではなく、電子と紙と半々ぐらいではないかと思っている(根拠はあまりないが)。

苦しいのは、広告だろうという気がしている。広告費に依存していたところは、おそらく、これから大変なことになっていくだろう(というかすでに大変だろうけど、もう上がらない)。
それから、本の書き手=著者は非常に高い質と人を引きつける力を要求されるだろう。

私は取次には、生き残る手があると思う。それはあの流通網を本以外のものにも生かすようにしていくことだ。数十万、数百万点もの商品を、全国の数千店の小売店へ、配達できる物流というのは、なかなかない。もちろん、再販制度に守られている部分もあるけれど、あの仕組みは、宅配便やコンビニ流通にも打ち勝っていけるような気がするのだが。でも、注文して何日も下手をすると何週間もかかる、現状の取次のままだと難しいとは思いますが。

ちなみに、これから出版の電子化が社会の大きな影響を与えるかというと、私はあまり変えないだろうと思います。それは、すでに書いたように、もうある程度の電子化は普及してしまっているからです。むしろエッセイがブログ化したようにマンガや映像の電子化と個人化が始まっています。

SNSやツイッターに見られるように人間は、結局コミュニケーションを渇望するのものです。私が根拠なく確信している未来は、電子化を当たり前とした世代が、やっぱり人と人って直接会うのが楽しいね、っていう世界ではないかと思います。たぶん、その方向に世の中は動いていくし、ビジネスチャンスもそこにあるでしょう。ま、お金はあんまり使わなくなるかもしれませんが。