川上弘美の群像1月号にのっていた「小鳥」があまりにもヒットだったので、「センセイの鞄」につづき、「神様」と「真鶴」を読む。結論としては、期待はずれだった。「小鳥」が最高で、ということは、次の作品がとても気になる。

真鶴 (文春文庫)

真鶴 (文春文庫)

神様 (中公文庫)

神様 (中公文庫)

以下、私の独断の分析メモ。
「神様」のクマを老人(センセイ=夏目漱石「こころ」の先生)に置き換えたのが「センセイの鞄」。同じクマを、幽霊にしたのが「真鶴」だ。クマ=神様=幽霊というのは、完全に直球。神様=センセイというのは、変化球。「神様」における神様=クマという図式も変化球なので、「真鶴」は、直球勝負にでた、というきがする。
「真鶴」のモチーフは、失踪と「砂」から、安部公房の「砂の女」。ただし、失踪する側ではなく、失踪される側を描いている。
 今月(2月号)の群像に、文芸漫談があり、安部公房の「砂の女」が取り上げられているが、そこで、安部公房のSF性。星新一などとの連続性が語られている。川上弘美は、筒井康隆が選考する賞でデビューし、ヘミングウェイの文体を意識しているという。文体は、星新一にも近く、また、現在形の多用から、ポール・オースターを連想する。ちなみに、筑紫哲也はテレビでポール・オースターを「日本でいえば安部公房のような」と紹介していた。
 そんなわけで、「真鶴」=「砂の女」裏バージョンである。

砂の女 (新潮文庫)

砂の女 (新潮文庫)

幽霊たち (新潮文庫)

幽霊たち (新潮文庫)

では、「小鳥」はどうか。この小説で、神様にあたるのは「たまち」と呼ばれる女性だが、この女性と語り手の女性は、一緒に住んでいる。クマ→センセイ→幽霊→同居人。神様は降りてきたと、とりあえずいまのところ書いておく。

全く無関係だと思うけど、「神様」を読んで、私はラファティのスナッフルズという小説を思い出した。
記憶がおぼろげなので、嘘かもしれませんが、クマのぬいぐるみみたいな殺人動物の話です。

九百人のお祖母さん (ハヤカワ文庫SF)

九百人のお祖母さん (ハヤカワ文庫SF)