中西準子「食のリスク学」を買った。

食のリスク学―氾濫する「安全・安心」をよみとく視点

食のリスク学―氾濫する「安全・安心」をよみとく視点

私はこの人の考え方、というか「リスクを数値化して比較できるようにしよう」という考え方を多くの人が理解するなら、ずいぶんと社会は住みやすくなるのではないかと、思う。とはいえ、こういった生活や生命にかかわることがらを数値にすることには根強い反発があるだろう。偏差値による学校の序列化のように。

リスク学の思想を突き詰めて考えたときに現れるのは「完全な善(正解)」は存在しないという発想だ。
どんなことがらにも、良い面と悪い面がある、というのは当然のことだと私などは考えているが、それを受け入れるのはなかなか難しい。

たとえばこの本の冒頭にのっている「水道水を塩素消毒すると発生する発ガン性物質」をめぐる話題を読めば、「発ガン性物質が発生するのだから、塩素消毒をやめよう」という一見正しい主張が、完全な間違いないではないとはいえ、塩素消毒をやめてはいけないことがわかるはずだ。

どんなことにも「悪(リスク)」があり、出来るだけその悪を減らそうとすること、決して完全に悪をなくすことなど出来ないことをこの本は教えてくれている。

ただ、科学者らしい客観的な見方を強調するあまり、理屈ではない人の気持ちを軽視しているように読める記述があるのが、残念だ。