わたしが子どもだったころ


みーにせがまれて、ケストナーの「わたしが子どもだったころ岩波書店を読み聞かせした。

以前に「点子ちゃんとアントン」や「エーミールと探偵たち」を読んだときには、どうもわたしの好みに合わないと思っていたのだけれど、この「わたしが子どもだったころ」は面白かった。

といっても、読んだのは途中の2章分ぐらいだけれど。

内容は、お話というよりもエッセイに近い。子供のころを回想したものだけれど、語り口はユーモアがあり、独特な冷めた視線で大人たちや自分自身をみつめているのが、面白く、そしてケストナーの境遇と、子どもながらのケナゲな姿が心に響く。

わたしが読んだ途中の章で、「結婚する」と嘘をつく女の人が出てくる。その嘘によって、ケストナーの母親は、損害を被るのだが、ケストナーの書き方は、ある種憐れみを持って、その女の人の気持ちに寄り添うように書いてある。書き方次第では、嘘つきのひどい女だといっても間違いではないのに、だ。

この「わたしが子どもだったころ」は、「点子ちゃん」や「エーミール」よりも、何十年かあとに書かれている。そのことも影響しているのか、わたしはケストナーの童話にはいまいち乗れなかったユーモアも、この自伝的エッセイでは楽しく読むことができた。

しかし、これは子ども向けなのだろうか? 大人が読んでも面白いと思うが、というか大人向けの気がする。