電子出版と紙の出版はテレビと映画のようだ


昨日、一昨日からの続き。この問題について、いろいろ考えて、二つの結論(というか仮説というか予測)が、とりあえず今の私にはある。それは

1。紙の出版物は、テレビに攻撃された映画業界のように生き残る。
2。人々がお金を払うのは、流通というサービスに対してであって、中身ではない。

というようなことだ。私が絶対正しい!などというつもりはなく、とりあえずこんなところだと思っているが、また考えが変わるかもしれない。でも、本はなくならないという、妙な確信がある。


1。
映画とテレビは書籍とインターネットによく似ているとおもいついた。テレビで映画を流す、ということは今でも、そしてテレビの黎明期にもあったことだ。映画が先にあって、最盛期を迎え、それがテレビの発明と普及で、停滞し、昨今では再び盛り上がってきている。

テレビでは無料で見ることができる。オンデマンドというわけにはいかないが、レンタルもある。また、大型のテレビで音響も映画館並みのシステムも売っている。しかし、映画を映画館で観ることと、テレビで映画を観ることを同一視するひとは少ない。

テレビが普及することによって、映画はいったん苦境に立たされ、映画館も減少したが、テレビの普及が一巡すると、また映画館はシネコンという形になって増えてきた。その善し悪しはともかく、映画館で映画を観るということ自体は、ある一定の割合をキープしているといっていい。名画座のようなところはどんどんなくなってしまったけれども。

お金を払い、なおかつ、出かけなければならない、映画館とくらべ、テレビで映画を観る、あるいはレンタルビデオ(DVD)で映画を観るのはとても楽だし、安い。時間も自由だ。しかし、その利便性があっても、一定の人間は映画館で映画を観る。もちろん、上映と同時期に放送したりレンタルしたりはしないけれども、たとえ、同時期でも映画館がなくなることはないだろう。

たとえばブログが書籍になった場合も、テレビと映画館の違いとよく似ているのではないか。ネットにどんな利便性があっても、一定数の人間はわざわざお金を出して紙の本を買う。無料のブログでさえそうなのだから、有料の電子書籍ならなおさらだろう。

たとえば、いま、ガンダムの映画をリバイバルしたら、かなりの人間が劇場にいくだろう。同じように、ネットでいくらテキストが買えるようになっても、良著であるとかずっと売れ続けているベストセラーは紙も売れるはずだ。

もちろん、雑誌とおなじような性質の本、時事的だったり軽い読み物、流行本のたぐいは、電子化すると紙は売れなくなるだろう。棲み分けが進んで、書籍のシェアが狭まるのは間違いない。でも、それはそれほど大きくないだろう、というのが私の予想だ。たえとえば、600円の文庫を、ネットで300円で読めるといったらどっち? ネットで100円なら? ラノベの重要な要素である表紙はどうする? 私の直感では、100円だとしても、600円の本の勝ちだ。値段で妥協するものではない、と思うからだ。

そんなわけで、電子出版はそれほどの脅威ではなく、また、その脅威はすでにかなり影響が出ているので、これからはその延長にしてもたいしたことはないだろうというのが私の考えだ。

2。
いろいろ考えると、人がお金をはらうのはモノ自体ではなくて、そのモノを「持ってきてくれてありがとう」と運んできてくれた人に払っているような気がしてきた。

本だけでなく、食品だって、その単価に含まれる流通が取る割合は結構高いのではないか、生産する側の取り分は少ないのではないか、そう思うからだ。(よく調べてはいませんが)

一番に思うのは、自販機の缶コーヒーで、缶コーヒーの単価に置けるコーヒーの割合、特にコーヒー豆の生産者の取り分は異常なほど低いはずだ。120円という単価のほとんどは、容器である缶だったり、運んだりストックしたりする人、冷やしたり暖めるための電力、自販機の設置のためにつかわれているはずだ(ちゃんと調べてませんが、間違いなくそうです)

値段というのものは、○○をつくってくれてありがとう、と払うものだと、みんな考えているけれども、ほんとうは、○○を運んでくれてありがとう、といって払っていて、そうやって運んだ人が、作っている人に「これ売れるからもっと作って」と薄謝を渡して作らせている。そういうものなのではないだろうか。

Appleだって、iPodiTunesで儲けているけれども、その儲けのための、音楽や、アプリをつくっているのは別の人間だからだ。

書籍も、ライターよりも出版社や取次、そして薄謝だけど書店員のほうが優遇されているではないか。(一部ウレッコ作家は除くけど)

音楽だって、作曲して演奏し作ってる人間より、レコード会社やプレーヤーのメーカーの人間のほうが基本的に有利な立場にある。
世の中のしくみとして、作る人間より、売る人間の方が優遇されている。ビジネスとは営業である。なるほどねえ。
というような結論で、3日連続の電子書籍をめぐるコラムは閉じます。

#ちなみに、ほとんどポメラで書きましたが、今回の途中で電池が切れました。2、3日は電池がもつことがわかりました。外出先でのブログマシンとして、現時点でポメラ+iPhoneは私にとって最強であります。








ちなみに、この記事は、池田信夫氏のブログにかなりインスパイアされました。ありがとうございます。