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私はデロンギの電気オーブンで、何かを焼いていた。オーブンの受け皿には焼けて流れた油や汁が溜まっていて、しまった失敗したと思ったりした。
そこは、私の実家とは違う家だったが、父と母がすんでいた。母は、私のそばにいて、「出来たか。お父さんも呼ばないとな」というようなことをいった。
父は2階にいたので、階段のしたから呼んだ。
私は出来上がった料理をテーブルに置いた。母はすでに座っていた。さあ、食べようとビールをあけた。父はまだこない。
そこで目が覚めた。
私は布団の中で、横になっていた。「母はもういない」という考えが浮かんだが、どうしてそんなことを思うのか、理解出来なかった。
そのうち、母と食事をとろうとしたことが夢であることが実感となってきた。確かに、私の母はもういない。何年も前に死んだ。
しかし、それでも私は、母がいないことに納得していなかった。
「じゃあ、いってくるね」と寝ている私に、かお先生はいった。もう出勤する時間になっていた。子どもたちも朝食をすませて、登校してしまっていた。
かお先生が出かけて、誰もいなくなってから、もそもそと起き出し、私はテーブルについた。
母はいないのか、と問いかけてみた。
いや、いる。
そうか、いるんだ、と納得した。
子どもたちのなかに。その声や仕草や笑顔に。ときどき見える。ああ、これはおばあちゃん譲りだな、と。
だから、母はいるのだ。
そして「ちゃんと宿題をやりなさい」と母は私を促しているのだと、私は思った。