私的電子書籍化元年

 電子書籍元年ということになっている2010年ですが、暮れも押し迫ったこの時期に滑り込むように私も、電子書籍を体験しました。といっても、新しい端末を買ったわけではなく、スキャナを買っただけですが。

FUJITSU ScanSnap S1500M FI-S1500M (Macモデル)

FUJITSU ScanSnap S1500M FI-S1500M (Macモデル)

あ、そういえば、それから裁断機も買いました。

プラスの裁断機は大きすぎるのと、子供の危険を考えて、やめました。

そうです。いわゆる自炊をしてみました。そして、その対象は、文芸誌「群像」「新潮」「文學界」「すばる」です。とうとう2年も買い続けたために、私の寝場所が危機的状態になっていまいました。で、捨てることも考えたのですが、どうしても捨てたくない。でも、スペースはない。というわけで、電子化して、紙は捨てるという苦肉の策をとることにしました。世の中では、「自炊」がはやっており、ノウハウも溜まり、機械もよくなってきているようですし、経験者のブログなどで、なんとか実用でききそうだ、ということで、やってみました。

約5万円は、少々高いと思いますが、本棚をいくつか買ったと思えば、そんなものかな、とかお先生と自分を納得させて、購入に踏み切りました。本棚買うとスペースは減るけど、スキャナなら増える、と。

で、まだ1週間ぐらいですが、やってみたらいろいろと、興味深いのものがありましたので、報告していきたいと思います。

ちなみに、かお先生のiBookG4がいかれ気味なので、新しくMacBookProも買いました。15インチのcore i5です。7年ぶりにパソコンを買いました。すげー速いです。ま、そんなところも含めながら、文学とマックと電子書籍について、書いていきましょう。

Apple MacBook Pro 2.4GHz Core i5/15.4

Apple MacBook Pro 2.4GHz Core i5/15.4"/4G/320G/8xSuperDrive DL/Gigabit/802.11n/BT/Mini DisplayPort MC371J/A

(ちなみに、液晶は職場のマックファンの助言に従い、非光沢ディスプレイに変えました)

1。本を解体、裁断し、PDF化することについて

 裁断機とスキャナだけでは、実は、「自炊」はできません。カッターとカッターマットが必要です。私は、すでに持っていたので、それを使います。値段とか使い勝手とかはとくに気にしていませんでしたが、カッターは大きくて立派な方がいいとは思います。
 裁断機がいちどに40枚しか、断裁できないので、80ページごとに切り分けます。80、160、240、320という数字は覚えておくと便利です。文芸誌は、だいたい300〜400ページぐらいなので、4分割か5分割になります。私は、中身が欲しいだけなので、表紙、背表紙と目次、それから広告のたぐいは抜き取り、白黒600dpiで読み込みました。

 カッターで切る、裁断機で背表紙は切るのは、そんなに大変ではありません。なれてしまえば、さくさくと進みます。1冊ごとに輪ゴムでとめて、スキャン待ちを作りました。

 時間としては、文芸誌1冊の解体に5分もかからないぐらい。スキャンに10分から15分ぐらいでした。スキャンと平行しながら、解体したので、だいたい1時間半で、8冊〜10冊ぐらいスキャンできました。まあ、めんどくさいといえばめんどくさいですが、やってできないものでもない、という感じです。現状30冊ぐらいスキャンしましたが、ま、時間をみつけてぼちぼちやろうと思っています。30冊分のスペースが空いて、その分の紙が紙袋に入って捨てられるの待っています。スペースが広くなったという実感があるので、掃除したという気分もあります。

 ただし、パソコンはそれなりの性能(CPU)が要求されます。というのも、読み込んだ情報をPDFにするときに、結構な処理(圧縮)をするからです。私のPowerBookG4では、1ページ読み込んでも、すぐにはファイルの保存が終わらず、スキャンが終わっても、待たされてしまいました。これは、あたらしいMacBookだと、待ち時間なしでした。というわけで、「自炊」には、古いパソコンではきつい、と思われます。

 PDFの容量ですが、文芸誌(A5)が1冊だいたい100MB(90MB〜130MB)でした。これが、新書だと、30〜50MB、文庫は1冊しかスキャンしていませんが、ごく普通のページ数のものだと、新書と同様だと思われます。
 文芸誌10冊で約1GBで、文庫新書なら20冊ぐらいということです。

 新書はページ数も少なく、サイズも小さいので、スキャンしやすい形態です。なので、まずは新書を電子化しようと計画しています。私はおそらく数百冊新書を持っていますので、新書だけで、段ボール箱数箱分のスペースがなくなる予定です。とらぬ狸のなんとかではありますが。

 何冊分もコピーするのは、ハードディスク間ならば、それほどストレスはないかもしれませんが、USBやLANを使って、コピーするのはちょっと時間がかかります。iPhone に文芸誌4冊転送しましたが、正確な時間は測っていませんが、転送している間にほかのことをしていました。重たい動画でも転送している感じだと思います。
 扱うには、微妙に大きいです。
 ですから、バックアップには、外付けのハードディスクを使うのがいいだろうと思っています。一応数百冊の本をスキャンする予定だからです。(文芸誌以外に、文庫と新書はほとんど読み込みたい)
 まだバックアップはとっていませんが、なくなる不安があるので、そこはなんとかせねばなりません。

2。PDFを読む

 私は、きれいさにはこだわっていないので、カラーページや写真のページも白黒で読み込みました(新書について)。マンガはほとんど読まないので、スキャンしていません。ドキュメント・スキャナは絵とか写真とかには向かないと思います。同じ理由から、表紙もスキャンしていません。文字だけでいいからです。表紙をカラーでスキャンしてあとでPDFを編集して本文にくっつけるというような手間はかけていません。

 で、読んでみました。

 MacBookPowerBookG4では、プレビューで読みます。やはりここでも、CPUの性能の差が効いてきて、古いパソコンでは、表示がもっさりですが、でも、読めないことはありません。MacBookは、iPhoneのように2本指で拡大縮小やスクロールができるので、かなり便利です。拡大しないで読むはちょっと厳しいな、という感じです。

 iPhoneにも転送してみました。私のiPhoneは3Gなので、相当遅いです。アプリはiBooksとGoodReaderの二つで試してみました。どちらにしても、文芸誌を表示するには、iPhoneは小さすぎます。なので、拡大して読むことになります。ただ、文芸誌は本文がだいたい2段組みなので、上半分(下半分)だけを拡大表示すると結構読めます(ただし字はすごく小さいです/老眼だと無理です)。iBooksは拡大しても、ページをめくると、もとの縮尺に戻ってしまうのですが、GoodReaderはそのままなので、GoodReaderの方をつかうことにしました。また、転送も、iBooksiTunesを使わないと転送できないけれど、GoodReaderはiTunes経由以外にも、ブラウザ経由で転送できるので、こちらのほうが、私にとってはなにかと使いやすかったというのもあります。(iPhoneの母艦PowerBookと、スキャンした文書の保存場所が違うため)

 ところが、GoodReaderで表示したところ、ページをめくるのに10秒ぐらい待たされます。これはかなりストレスです(iBooksも気持ち早めだけど同様)。これは、もうiPhone3Gの性能なのでどうしようもないです、iPadやiPhone4ならば、快適にめくれると思われます。

 で、最初は、これじゃあ、外で読むのは難しいだろうと思っていました。ただ、当初の目的は、本を電子化して、紙は捨て、スペースを稼ぐことだったので、iPhoneで読めなくても、パソコンでよめればいいと思っていました。
 ところが、現時点での最新号である文芸誌4誌の1月号を4冊分iPhoneに入れて、ためしに通勤電車のなかで読んでみたら、あらあら読めるではありませんか。ていうか、本で持ち歩いているよりも、読んでしましました。
 物珍しさもあったのだとは思いますが、とりあえず、1冊読めてしまった。

 表示は遅く、字は小さいのに、紙で持ち歩いているときよりも、なぜ、読めてしまったのか?

 理由は、電車の中、しかも電波が通らないので、Webがみられない状況だったこと、ページめくりに時間がかかるので、結局、1ページづつ読んでしまうこと、小さい端末なので、立ったまますぐに取り出せて、邪魔にならないこと、などが考えられます。
 ちなみに、読み終えたのは、「新潮」の2011年1月号ですが、冒頭の円城塔「これはペンです」もドン・デリーロの「第三次大戦における人間的瞬間」も、最初は取っ付きにくくて、じっくり読んでいくうちに、その良さがわかってくるタイプの小説で、途中までは、もう飛ばそうかなとおもいながら、でも飛ばすのめんどくさいしな、などと思いながら読んでいくうちに、いやあ、これ面白いな、と思ってきたりしたりしたからです。多分、紙だと、飛ばしたのではないかと思います。つまり、操作性が悪いから、逆に頭から読んでいけた、と。

 そういえば、「群像」は、電子書籍版のパイロット版をiPhoneアプリとして、無料配布しています。
http://itunes.apple.com/jp/app/id409318594?mt=8

2010年10月号の短編と、連載の第一話が読めるようになっています。これもとりあえず、ダウンロードしてみました。こちらはもちろん専用アプリということもあって、表示にもたつきはありませんし、字もそれなりの大きさです。
 ところが、これより、スキャンした方が、なぜか、読んでしまうんですよね。もしかすると、解体してスキャンした手間がかかっているからかもしれませんが、たぶん、紙のレイアウトって、読みやすいのではないかと思います。産經新聞のアプリも紙面のレイアウトをそのままにして、拡大して読むようになっていますが、この方が、各記事ごとに、きれいにiPhone用に表示されるよりいいと思います。やはり紙のレイアウトというは、なんらかの必然があるわけで、iPhone用の表示は、どことなくこなれていない感じがします。まあ、慣れの問題かもしれませんが。
(群像のアプリ、できれば目次から、そのページへすぐ飛べるようにしてほしいです:本文と矛盾していますが)

 そんなわけで、「新潮」が終わったら「すばる」1月号の吉田秀和の名文に酔うということも、ポケットのiPhone1台ですんでしまうわけです。
 いままでは、かさばるので、鞄に1冊か2冊づつ入れて読んでいたのですが、そうすると、気分が乗らないで読み飛ばした小説があっても(ていうかいつもは大半がそうなわけですが)、鞄から取り出して、ほかのと入れ替えてしまうと、ほぼ2度と手にとらないわけです。そこが電子化すると全然ちがう。さあて、どれ読もうかな、といつでも選べ、片手でさくっと(といっても表示は遅いけど)読める。今日も、帰りの電車で読んできましたが、紙の本は持っていっていません。

 そんなわけで、私は、一読者、本好きとして、電子書籍は、じつはかなりいけているのではないか、という結論に達しつつあります。これで、本文が検索できたらどれだけ便利かとか、スキャンしやすいように、すぐにページがばらばらになる本を売ってくれないか、といったことまで考え初めています。
 つまり、「自炊」をしてみて、私は、電子書籍にかなり肯定的なってしまったのです。

(つづく……)
(ちなみにこの文章は、年賀状をプリントアウトするために、プリンタのお守りをしながら書きました。年超えてるじゃん!)

 あ、忘れてましたが

 あけましておめでとう。