土曜日は園の進級式に途中まで出て、仕事へ。ひとつひとつ階段をのぼって大きくなっていく子供たち。気がついていないのか、気がつきたくないからか、よくわからないうちに、着実に年をとっていく我々大人たち。ああ、もう四月になってしまう。
 仕事はわりと忙しい。不況といえども、年度末の土曜。学校や保育園関係のもの、資格をとろうとか勉強しようとか、そういう物も売れる。学生は春休み。役所などは年度のシメ、企業は決算。実は、この1週間か2週間ばかりは本が売れる時期なのです。

 日曜日は、3年前の園の仲間たち=ちーの同級生とサイクリングへ。天気もよく、まさしくサイクリング日和。川沿いの車の通らないサイクリングロードを通り、ついたところは田んぼのあるところ。お弁当を食べて、田んぼのなかでどろどろになって遊ぶ子供たち。小学3年生ともなると、なかなか泥だらけになる機会もないだろうから、みんなほんとに楽しそうにあそんでいた。オタマジャクシやタイコウチなんかを捕まえたりして、自然のなかで遊ぶ子供の表情は、TVやゲームをやっているときの表情とは違うなあ、としみじみ思う。

 実は、この木曜日には、私も子供たちも休みだということで、海に行ってきた(かお先生はお仕事)。電車を乗り継いでモノレールに乗って1時間半ぐらい。お弁当も持っていった。
 ちーはなぜか乗り気でなく、いやいやといって駄々をこねていたが、駅までむりやり連れて行くと、あっさり気分は変わって、ニコニコ。いったことのない道のり、電車に乗り、見慣れない風景を眺める。出るのが遅かったので、お腹がすいた、というので、こっそり電車のなかでおにぎりを食べる。
 私は小さい時にしょっちゅう海にいっていたせいもあって、海が見えると、元気がでる。三人の子供をひきつれて電車に乗るのはかなり大変なのだが、海の風にあたると、疲れは吹き飛ぶ。まあ、強風で寒かったのだけど。
 砂浜であそぶ子供たちの表情が、ほんとにうれしそうで、こんなに喜ぶのか、とこっちがびっくりするぐらいだった。(といっても、さとが岩から落ちてけがをしたので、すぐに帰宅となりましたが>けがはたいしたことなかったけど、大泣きして、たんこぶができてしまった)

 おもちゃを与えてももちろん喜ぶけれど、この寒いのにズボンをまくり上げて、海や田んぼの泥に入ったときに、全身で自然とふれあうことは、我々が大地と切り離しては生きていけない存在だということを、暗黙に知らしめることになっているのではないか、と思う。
 そして、それは、人間としての根源的な喜びなのではないか、という気がしている。

 というわけで、久しぶりに、寝る前の本読みをする。
さとは、これ。

だいちゃんとうみ (こどものとも傑作集)

だいちゃんとうみ (こどものとも傑作集)

みーにどれにする、といっても答えない。ちーと同じでいいらしい。

ハイジ (福音館古典童話シリーズ)

ハイジ (福音館古典童話シリーズ)

 ハイジがフランクフルトから、またおじいのところへ戻ってきたが、アルムの山にはもう住んでいないところを読む。ペーターは忙しくて学校にいけない、といっているけど、学校が終わる頃には、学校に来てハイジといっしょに帰るみたいな話がある。
 で、ハイジはおばあのところを訪ねるのだが、ここが、すばらしい。
 ハイジは古い歌の本をおばあに読んであげます。その最後の言葉。
 
「この目が暗くくもったときは
 この心を照らしてください
 家路をたどる旅人のごとく
 いそいそとみもとへ行けるように」
 
 おばあさんはこの言葉を何度か自分でもくりかえします。
 ハイジは「おばあちゃん、あたしよくわかってよ、家路をたどる旅人のごとくって、どういうことか」と言います。すごいなあここ。「みもとへ行けるように」がどんな意味かは、ハイジにはまだよくわからないことを暗に表現しています。おばあさんはこの歌で表情が明るくなり、それをハイジは喜んでいるのです。その対比がすばらしく悲しい。
「ほんとに、よかった、おばあちゃん、また元気になってくれたんですもの」というハイジに答えて、おばあさんはいいます。
「あたしだって、ほんとによかったと思ってるよ。こうして寝ついちゃいるけど、とっても気分はいいんだ。どう思う、こうして何日も何日もひとりぼっちで横になってて、だれの声もきかなければ、何にも見えず、日の目一つ仰げないだなんて、この気持、その身になってみなけりゃわかるもんか。そうやってると、ついつい気がふさいで、もうこれっきりお先まっくらだなんて思いこんじまうの。そういうときに、おまえの読んでくれたようなことばをきくと、心の中にひかりがさしてきたみたいに、またたのしくなってくるんだもの」
 読みながら、涙腺の緩くなった私は泣いてしまう。さととみーがなんで泣いてんの?というふうに不思議そうにみる。

 ハイジは家に帰ってから、おばあちゃんは、このことばをよんできかせると元気になるけど、今度いけるのは一週間後か二週間後になってしまう。毎日よんであげられればいいのに。そう考えて、ふっといい考えを思いつきます。
 さて!
 というところで、次章。
 おいおい。うますぎだぜ、ジュピーリさん。
 次章で、ペーターが学校にいっていないことが伏線となって生きてきます。うわああ、すばらしい物語だなあ。
 へんな小説読むぐらいならハイジ読もうよ、って思う今日この頃でした。