この楽しき日々―ローラ物語〈3〉 (岩波少年文庫)

この楽しき日々―ローラ物語〈3〉 (岩波少年文庫)

子供たちは先月から、ずっと読んでいるのだが、私は久しぶりに読んだ。というわけで、最初の方しからないまま、もう佳境である。ていうか、プロポーズするまさしく、ここが一番の感動の場面だった。
 いやあ、おもしれーなあ、これ。ほんと個々の文章もいい。音読するから、音の響きと言葉の選び方の品のよさがびしびし伝わってくる。(日本語なので翻訳の方のセンスですが)。
 しかし、それ以上に、この物語の運び方が、すばらしい。
まず、「歌の学校」が教会で開かれる、というシチュエーションがあります。主人公のローラは歌がすきで、歌の学校に行くのがたのしいわけです。まず、その歌の学校がいろいろと説明したり描写されたりする。で、歌の学校に通うのに、時代が、時代だけに、馬車に乗っているのですが、この馬車は、ローラの恋人であるアルマンゾが運転しているわけです。馬車を自動車にすれば、これは今と変らないですね。
 ところが、この馬車をひく馬が、まだ野生の馬を捕まえた(らしい)人に慣れていない馬で、油断すると、暴走するかもしれないわけです。で、実際、ローラがひとりが乗ったところで暴走ではないものの、走り出し、ハラハラドキドキの場面になったりします。
 いいですか、ここではプロポーズのほのめかしなんてないわけです。読者は、この馬をローラが打ち解けていく過程に目を奪われます。地の文も、馬を中心にすえ、ところどころ歌の学校や、アルマンゾが出てくる。で、ローラは「ほんとは素直なのよ」といい、見事、馬を手なずけるわけです。なんか、ナウシカの冒頭みたいな場面です。
 ああ、よかった。とか、信じれば叶うんだなあとか、ローラはすごいな、とかいろいろ思っているところで、突然、プロポーズ。
 でも馬のエピソードがあるおかげで、アルマンゾとローラどんだけ打ち解けているか、よくわかる。しかも、馬を手なずけている、ことから、男を手なずける、というのが、隠喩だか換喩だか忘れたけど、当然、読者の頭の中にあるわけです。だから、プロポーズが突然なのに、必然なんですね。
 基本的に、事実をもとにしているということですけど、これはストリーテリングの才能がなくてはできないことではないでしょうか。
 ていうか、ほんとにすごいです。

追記:かお先生いわく「でも、まだ、一五歳ぐらいじゃない。物語上アルマンゾは21ぐらいだけど、モデルになった人は10歳ぐらい上だったらしい」ということ。じゃあ、中学生じゃないか。「でも、日本だって昔は、そのくらいで結婚してたしね」うーん、どうして今は遅くなったのでしょうか?「生きるのが遅くなったからじゃない」生きるのが遅いって、先生、どういう意味ですか。